独りぽっちの裸のメロDIEー

あんたは寂しくはないかい? あんたは愛に生きているかい? 僕はね。僕は生きてる。生きてるのに死んでる。 そんな独りぽっちの夜に逃げ場所を探し求めて、 「寂しがり屋日本代表」KUSOGAKINGが放つ愛と孤独と裸のクソッタレた言葉達。にゃんにゃん。

ピーターパンに謝りに行こう

前回の続き。

 

 

 

 


アキラ(仮名)の家に辿り着いた小学1年生のおぃらと倉ちゃん(仮名)。そこで目にしたのはまるで物置小屋の様に荒れ果てた家。壁はボロボロの木でできていてね。割れた窓ガラスにガムテープを張りつけていて天井は瓦が所々無かった。おぃらも倉ちゃんも小学生ながらに衝撃を受けたんだ。ピンポンもなかったからね。家の中に向かってアキラを呼んだけどね。家には誰もいなかった。

 

 


次の日、アキラの家に行った事を先生に話した。そしたらね。先生がアキラの家庭は「大変なんだよ」とだけ教えてくれた。あの頃は「そうなんだ」って子供ながらにね。ただ納得して終わっちまったんだけどね。何年かしてからね。アキラの家庭の話を誰かに聞いてね。始めて理解したんだ。アキラの家庭はお父さんが借金を作ったまま夜逃げしちまってね。お母さんがアキラとアキラの妹を働きながら育ててたんだ。アキラが暫く学校に来なかったのはね。理由は解らねぇけどね。おじいちゃんの家に行っていたからみたいなんだ。よくある話なのかもしれないけどね。

 


あたり前の様に学校に来て。給食を食べて。あたり前の様に帰る。戦いごっこをしながら。安全な世界。平和な世界。だけどね。あたり前なんかじゃなかった。小学1年生のおぃらはね。小さな世界しか知らねぇ。ただの子供だった。

 

 

 


アキラはね。おぃらの隣の席にいる時にはね。歯もねぇ顔でね。いつも笑ってやがったのにね。恋をしたりね。誰かが愛しくて悩んでいたのにね。もっと大きな現実を抱えていたんだ。

 

 

しばらくして久しぶりに学校に来たアキラにね。たいして何もわかってねぇおぃらはね。家に行った事。心配してた事を話した。アキラはいつもと変わらない歯もねぇ笑顔でね。笑ってやがった。おぃらはただ。ただ戦いごっこをする事しかできなかったよ。

 

 

 

それから暫くしてある休みの日。友達の栗(あだ名)の家で倉ちゃんとアキラと遊んでいた。栗は少し太った天然パーマ野郎でね。お坊ちゃんだった。夕方になりアキラが先に帰り3人になった時、栗の母親が来ておぃら達にこう言った。
「あの子(アキラ)とはあまり遊んだら駄目よ。危ない子みたいだし汚いみたいよ。家にはなるべくいれない方がいいわよ」。
笑顔で言った。おぃら達に向かって本当に言ったんだ。爽やかな顔でよ。自分が間違ってるとは微塵も思ってない様な顔でよ。

 

 

 


「このクソババアが!!」

 

 

 

おぃらはその瞬間、心から怒った。心から許せねぇと思ったのは始めてだったかもしれねぇ。だからね。だから今もあの時あのクソババアが言った言葉ははっきりと覚えている。それくらい衝撃的だったしね。それくらい哀しかった。小さな体に刻みこまれたんだ。栗には悪ぃけどね。

 


世間では何も悪くねぇ小学1年生のアキラに対してね。大人達は冷たい目を持っていた。世間の事は何も知らねぇ。小学1年生のおぃらは大人達にがっかりした。

アニメや漫画の中の主人公達はね。格好よくてね。差別なんかしなかった。弱い者虐めなんかしなかった。それが大人なんだと思っていた。だけどね。だけど現実はね。大人達はおぃら達に「誰とでも仲良くしましょう」なんて言っときながらね。差別をしっかりとしてやがった。
おぃらはね。子供ながらにね。いつも心のどっかで叫んでいた。寂しいよ。寂しいよ。誰か助けてよ。誰か助けてよ。
だからね。大人達にはね。せめて弱い者の味方でいてほしかった。アキラは何も悪くないんよ。ただの子供だよ。いい奴だよ。人を純粋に愛する事ができるいい奴だよ。おぃらはね。アキラが好きだった。なのにね。なのにそのアキラを悪く言う大人が哀しかった。恐かったよ。

 

 


それから2年ほどしておぃらは引っ越しをしちまった。アキラとはそれっきりだ。

 

 

あれから何度も何度も年越し蕎麦を食べて来たおぃら。大人になったおぃら。いろんな人と出会って。別れた。哀しいけどね。今ならね。あのクソババアが言った言葉が少し理解できちまう。自分の大切な人は守りたいもの。
大人になるにつれてね。冷たくなっちまうのかな。ピーターパンに誤りに行かないと。誰とでも仲良くなんてできません。いつまでも子供の心ではいられません。哀しいけどね。ごめんよ。

 

 

 

アキラ。元気にしてっか?おぃらの頭の中じゃお前はいつまでも小学生のままだよ。お前がどんな人生の中にいてもね。いつまでも変わらねぇお前でいてくれたらいいな。いつまでも好きな人を好きだと堂々と言えてるお前でいてくれたらいいな。
弱いおぃらはありのままではいれねぇ。もうありのままも解らなくなっちまった。戦いごっこももうできねぇ。弱いんだ。お前が小学生の頃好きだった子と結婚でもしてくれてたらさ。愛も満更でもねーななんて思えそーだよ。

 

今日のお薦めBGM=SHE'S「Letter」