独りぽっちの裸のメロDIEー

あんたは寂しくはないかい? あんたは愛に生きているかい? 僕はね。僕は生きてる。生きてるのに死んでる。 そんな独りぽっちの夜に逃げ場所を探し求めて、 「寂しがり屋日本代表」KUSOGAKINGが放つ愛と孤独と裸のクソッタレた言葉達。にゃんにゃん。

精春物語(中編)

「生涯精春」。幾つになっても馬鹿してたい。夢も希望も無くしてね。腐れた世の中の常識の中だけで生きるのはごめんだ。大人になってもね。親になってもね。おじいちゃんになってもね。輝ける場所が欲しい。格好いいおじいちゃんになりたい。ゲートボールも将棋も演歌も素敵だけどね。いつになってもね。カラオケ大会でパンクを唄ってる様なね。そんなおじいちゃんになりて-な-。そんな話をいつもしてたっけ。そんな話をいつも笑ってしてたっけ。だけど。だけど今。おぃらには。そんな未来が見れないよ。





パンクロックに目覚めたおぃら。ギターをしていた笹ヤン(あだ名)と一緒にね。おぃらはバンドを組んだ。パンクロックはね。おぃらに魂をくれた。好きだ。好きだ。忘れらんないよ。寂しいよ。そんな心の中をね。そんな衝動をね。表現する居場所を見つけた。

 


「クソッタレ!!」

 


マイクを握り締めるとね。おぃらがおぃらになる。スイッチが入るとね。おぃらの中に隠れていたおぃらがね。全てが暴れ出す。体中から血が逆立ってね。脳ミソはグリングリン。目の前に広がるスポットライトの光がね。おぃらの中の闇を掻き消す。
格好つけたりね。いきがったりね。飾ったりね。そんな事どうでもよくなっちまう。顎が外れちまう程大きな口でね。声が消えちまう程大きな声でね。飛び跳ねて暴れ回る。おぃらの頭は真っ白白助。おぃらのアソコはビンビン状態。おぃらの中にある。真っ黒でドロトロな部分。全て解放できた。




何も無かったおぃらはね。沢山のモノを得る事ができた。隣にはね。いつも笹ヤンがいてくれた。同じ瞬間を生きた。
汗臭い男だらけで作ったしょっぱいカレーライス。クソ不味かったのに美味かった。公園で朝になるまで夢を語り明かした日。路上で絡んで来たチンピラ野郎共から全力で逃げた夜。始めての大人のお店。
夏の海にパンツ一丁で飛び込んでよ。財布を無くした馬鹿。クリスマスのイルミネーションをぶっ壊してよ。警察に追い掛けられてさ。綺麗なお姉さんと遊んでよ。怖いお兄さん達に追い掛けられてよ。おぃらはただ。ただ嬉しかったんだ。独りじゃない事。理由もなく。毎日の様に。毎日の様に一緒にいれた事。居場所がある事。ただ。ただ嬉しかったんだ。





全てがまるで昨日の事の様にね。今もキラキラキラキラ輝いてやがる。ジョニー(あだ名)。大原(あだ名)。笹ヤン。おぃら。今も。今も変わってないよ。少し。少し。大人になれたかもしれね-。だけどね。何も変わってないよ。あのメロディーが今も耳から離れね-よ。





あたり前の様に毎日を生きてね。あたり前の様に歳を取って死んで行く。だけどね。それってどれだけ幸せな事なんだろうな。

 


人間は何かを得ると何かを失っちまう。どんな事もね。息苦しくなっちまったりする。
恋愛だってね。最初は一緒にいれるだけでいいのにさ。次々と求めちまう。最初は唄えるだけで幸せだったのにさ。次々と求めちまう。歓声と応援の間には必ず罵声と妬みが出てくる。

 


次第に。おぃらは孤独を感じる様になって行った。友達や友情じゃね。埋められない部分もある。埋められない孤独もある。好きでもない女の子と一緒にいてね。好きでもない事ばかりする。おぃらはね。本当に人を。人を愛する事が恐かった。人を愛する事を忘れちまっていた。なんで自分だけ。なんで自分だけ。寂しい。辛いよ。助けて。愛されたい。愛したい。



長く付き合っている彼女がいた笹ヤンにね。八つ当たりしたりもした。「生涯精春」という言葉をね。いつの間にかね。逃げ道にしていたんだ。笹ヤンの中の闇にね。気づいてもやれなかった。



なぁ。あの時どうしておぃらは。お前の中の闇に。どうして。どうして。気付いてやれなかったんだ。同じ痛みを抱えていたはずなのに。どうして。どうして。気付いてやれなかったんだ。後悔ばかりだ。ごめんな。ごめんな。



人は死んじまっても歌を唄う事ができるのかな?

 

今日のお薦めBGM=SKUNK SHOT BOOSTER「友へ」