独りぽっちの裸のメロDIEー

あんたは寂しくはないかい? あんたは愛に生きているかい? 僕はね。僕は生きてる。生きてるのに死んでる。 そんな独りぽっちの夜に逃げ場所を探し求めて、 「寂しがり屋日本代表」KUSOGAKINGが放つ愛と孤独と裸のクソッタレた言葉達。にゃんにゃん。

雨と煙草の狂想曲

おぃらが長年愛用している煙草は「JPS」という煙草だ。こいつとの出会いは今からもう4、5年前。煙草の自動販売機の中でひときわ輝きを放っていたこいつにおぃらはまるで始めてアダルトビデオを見た時の様な衝撃を受け一目惚れをしてしまった。
真っ黒の箱に金色のロゴ。そして側面には「KING SIZE」と描かれている。なんて格好いいんだ。おぃらはその日からこいつと共に人生を歩んで来た。キャバクラに行ってこの煙草を吸っていると女の子達が「この煙草始めて見た~」とキャピキャピした声で注目してくれる。スナックに行ってこの煙草を吸っているとママが「あんた珍しい煙草吸ってるね~」っと低い声で近寄って来る(嫌なのに)。ごく一部の自動販売機や昔ながらの煙草屋さんにしか売ってねぇこの煙草を珍しさと箱の格好良さからおぃらは手放せなくなっちまった。

 

 



おぃらが煙草を吸い始めたのは18歳のある冬の雨の日だった。シンガーソングライターとしてプロを目指していたおぃらはね。それまで声が汚くなるからと数々の誘惑に打ち勝ち煙草を吸わなかった。だけどね。あの日。4年間付き合った彼女がいなくなっちまったたおぃらはね。涙を堪える事ができずね。雨の中をズブ濡れになりながらね。あてもなく歩いていた。

 

どうしようもない絶望感。後悔と孤独。真っ黒な道に自動販売機の光だけが眩しく光っていた。おぃらは水びたしになった財布からお金を取り自動販売機で煙草を買った。おぃらが大好きだったミュージシャンが吸っていたセブンスターだ。寒さで震える手と唇を懸命に落ち着かせ煙草に火をつけた。煙を喉の中に吸い込みおぃらは咳をした。始めて吸った煙草は雨で濡れてすぐに消えちまった。甘くもねぇ。苦くもねぇ。ただ本当にね。哀しみでいっぱいだった。



あの時ね。おぃらは何かを変えてやりたかったんだ。本当にね。辛かった。絶対にね。失う事はねぇと思っていた彼女。裏切られる事はねぇと思っていた彼女。その彼女に裏切らられてね。失った夜。本当にね。辛かった。あの夜おぃらは誓った。もう2度と誰にも心を開かねぇ。もう2度と誰も信じねぇ。おぃらの心の中は真っ黒になっちまった。空も街も心もね。過去も未来もね。何もかも真っ黒だったあの雨の夜。煙草の自動販売機だけが光っていた。
ただね。何かを変えてやりたかった。彼女の知らねぇおぃらをね。作らなきゃいけなかったんだ。あの日から煙草を吸わなかった日はねぇ。あれからいろんな奴と出会ってよ。いろんなな奴と別れたけどね。煙草はずっとおぃらのすぐ側にいるよ。

 


あの夜からおぃらは生きる為に変わらなきゃいけなかった。だってね。あの夜。おぃらは死んだんだ。彼女と一緒にいた頃のおぃらは死んだんだ。殺さないと駄目だった。あの頃はね。本当に辛かったよ。笑えねぇ。寝れねぇ。食べれねぇ。歌えねぇ。おぃらの心には厚い厚い。本当に厚いバリアができちまってた。だけどね。それからおぃらはいろんな世界に行ってよ。いろんな人達と出会ってよ。あーおぃらはなんて小さな世界で生きていたんだって思った。世の中にはいろんな人間が本当にいるな。いろんな世界が本当にあるな。おぃらは何も知らねぇ子供だったんだって気が付いたよ。

 

 


だけどね。世界が広がれば広がる程ね。汚ぇモンも沢山見ちまう。薄汚ぇ人間。薄汚ぇ世界。おぃらはそんな薄汚ぇ色に染められてよ。平気で人を傷付ける様な人間になっちまった。
最近、凄く思うんだ。薄汚ぇ物を見る度にね。おぃらも薄汚くなっている。だったらね。何も見たくなかった。何も知りたくはなかった。あの夜のね。あの夜の前の日のままのおぃらでいられたらね。おぃらはきっとね。もっと優しい人間でいられたと思うよ。

 

 

 

 





アナタはこの世界の現実を沢山見て来たのにどうしてそんなに綺麗な心でいられるの?

 

アナタは傷付けられてばかりのこんな私をどうして愛しく思えるの?


強くなりたいわ。

 

優しくなりたいわ。

 

大きくなりたいわ。

 

アナタの為に生きていたいわ。

 

アナタは私の光なの。

 

私の心臓はアナタと同じ色に染まり

アナタと同じメロディーを奏でて

アナタと同じ空間でだけ鼓動を鳴らすの。

 

聴こえてる?

今日のお薦めBGM=GOMESS「人間失格