僕が君を忘れても
おぃらは彼女と付き合っている間。他に好きな子ができた事があった。その子は彼女の友達だった。おぃらはその子を想ってはいたけど行動に移す事はできなかった。彼女の友達だからか。勇気がないからか。多分、両方だ。だけどね。だけどそれよりもね。彼女を失う事が恐かったのかもしれない。
彼女とは別れたり。付き合ったりをね。繰り返す様になった。葛藤があった。彼女はおぃらが作る曲の歌詞なんかを見て「他に好きな人ができたの?」と気付いていた。それでも彼女はずっと側にいてくれた。ずっとおぃらを思っていてくれた。おぃらはいつからかそれがあたりまえだと思ってしまっていた。愚か者だ。
心の中で「彼女は絶対にいなくならない」という慢心があった。それだけじゃない。おぃらはいつも自分の事ばかりでね。彼女の事を。気持ちを。未来を。考えてあげれていなかった。
そんなある日。彼女と待ち合わせをしていた駅で彼女に会った。彼女は突然。おぃらにこう告げた。
「他に好きな人がてきたの」
「百年の恋も覚めたわ」
おぃらは雨の中をずぶ濡れになりながら帰ろうとした。帰ろうとしたけどね。帰れなかった。息はできなくなっちまってね。手の震えは止まらなかった。
おぃらは彼女に電話をした。「別れたくない」。
彼女は「もう1度話そう」と言ってくれた。
おぃらには現実として受け止めれなかった。絶対にいなくならない。絶対に離れない。そう思っていたから。
待ち合わせに彼女が来た時。彼女は車に乗って男と一緒に来た
「誰?」と聞くと彼女は「彼氏だよ」と答えた。
ほんの何時間前まで自分が彼氏だったはずなのにね。本当に辛い現実だった。
おぃらはそれでも彼女に縛りついていた。女々しくてしょ-がね-けどね。電話をしたりね。家に行ったりね。ストーカーみたいなもんだよ。彼女の態度は一変して冷たかった。「お金をくれるなら会ってあげるよ」。そんな言葉さえも吐いてきた。
あまりにも急な変化。現実におぃらの心は死んでいっちまった。もう誰も信じれない。もう誰も愛せない。
彼女だけが必要だった。彼女じゃなければ埋められないものがあった。
彼女を忘れるにはあまりにも沢山の時間を一緒に過ごしてしまっていて無理だった。そして。何よりもね。おぃらは弱くてしょ-がなかったんだ。
あの頃は絶望だけが目の前にあった。おぃらの世界は彼女でできていたんだ。
だけどね。今。今、思えばね。彼女はわざと冷たくしてくれていたのかもしれない。そうでもしないとね。おぃらはいつまでたっても彼女を頼ってしまう。それが彼女にはね。解っていたのかもしれない。
続きは次回。
今日のお薦めBGM=カミナリグモ「こわくない」